2023/01/03 11:44
20代の頃の経験を香りにした「.yesyes No.2」。
その経験をストーリーとしてご紹介します。
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1991年5月。オーストラリア、ケアンズ。
初めての海外旅行で触れた異国の空気、匂い。突き抜ける青空。
「ピン」と張り詰めた糸が切れる寸前、息苦しい毎日から決意の脱出。
たった1週間が人生を変えた。
22歳のわたしは、自分を見つけられずにいた。
就職した就職した地元の会社で色々あって、すぐ辞めた。
ずっと好きだった英語を使う仕事がしたくて上京を決意。
海外取引のあるメーカーに応募した。どうやら1人だけ採用されたらしい。
英語がペラペラじゃないのに上司に「なぜ?」って聞いたら「笑顔」って返ってきた。
そんな時代。バブル真っ只中。
やりたかった仕事。楽しくて仕方なくて、のめり込んだ。
あの頃、世の中には成功の形があって、当たり前に皆が目指してた。
それなりに仕事して、週末はコンパやパーティへ。
丸井のカードでローンで毎月そろえるDCブランド。
自分を着飾ることに精一杯の中、違和感が増していく。
都会のOLぶって、見栄はって。
「なにやってんだよ、自分。」
無理して背伸びする自分が虚しくて、ちっぽけで、本当は嫌だった。
ある日、先輩が声をかけてくれた。
「オーストラリア行かない?」
答えは決まっていた。
そうしてたどり着いたオーストラリア。
壮大な自然、人の温かさにふれて、何かに満たされていった。
多様な人種と文化、どんな格好で何をしても、目立つことも値踏みされることもない。
季節感ゼロでお気に入りの服を着て歩く人、裸足で買い物をする人もいる。
ありのままの風景。
人の目なんて気にしない。自分を大きく見せたりしない。好きに楽しく生きたらいい。
あったのは、完全な自由だった。
肩肘はって、神経尖らせ、背伸びして、ひとりになったら、ぽつんと落ち込む自分がばかばかしく思えた。
裸になろう。めんどくさいもの、全部捨てちゃえ。
「そのままでいいじゃん。」
はじめてそう思えた。
満員電車を降りて、自分の足で歩きたい。
くだらない競争社会から開放され、赦しをもらったような気持ち。
冷え切った心に体温を取り戻してくれた、ケアンズの空。
生まれ変わったみたいで、思わず笑っちゃった。
あの時の体験を届けたくて、生まれた香りです。